ティンダー

Tinderで身に付いた人生観

第1章「はじめに」

 昨今、日本では晩婚化や未婚化が叫ばれていますが、マッチングアプリの知名度や人気は年々増しています。マッチングアプリはもともとアメリカ発祥のもので、インターネットの普及とともに始まりました。日本ではかつての「iモード」の普及とともに始まりましたが、「出会い系」というネガティブなイメージワードで認識されてしまい、当時は市民権を得られませんでした。かつてはあまり良いイメージをもたれていなかったマッチングアプリでしたが、「本人確認の徹底」「ルール違反の監視」「利用者への啓蒙・注意喚起」などが功を奏し、日本でも知名度も人気も上昇し、ここ数年は市民権を得て多くの人に利用されるサービスとなりました。特に、昨今流行っているマッチングアプリはAIなどのテクノロジーが活用されていて、サービスレベルがとても高いです。オフラインの出会いよりもマッチングアプリを使った出会いの方が、趣味や好みが合う人と出会いやすいと認識されていて、もはやマッチングアプリを使うことは何も特別なことではないという時代になっています。
 そんなマッチングアプリですが、日本だけでも有名なサービスはいくつかあります。そんな中、今回紹介していくのは「Tinder」というマッチングアプリです。Tinderに関しては日本だけでなく世界中で使うことができるサービスで、とてもグローバルなサービスとなっています。今回は、そのTinderアプリを使うことで身に付いた人生観について話をしていきたいと思います。

第2章「Tinderというアプリ」

Tinderは数あるマッチングアプリの中でもかなり有名なアプリの1つなのですが、この章ではそのTinderの特徴について触れていきたいと思います。
まず、TinderはFacebookとの連携ができるアプリです。それゆえ、Facebookの位置情報サービスがTinderにも応用されていて、位置情報に基づいてマッチング候補者の写真が次々と表示される、という設計になっております。そのため、現在地に近い場所にいる人がマッチング候補者として写真が画面表示されてきます。現在地から相手の位置までの距離が最長で何kmならその人の写真をマッチング候補者として表示するのか、という設定をすることも可能です。たとえば、最長距離を10kmに設定すると、現在地を中心として半径10km以内の人だけがマッチング候補者として写真表示されます。
また、Tinderは位置だけでなく、相手の年齢や性別も設定することができます。多くのマッチングアプリが同世代同士や異性愛者同士のマッチングを基本に設計されていますが、Tinderは設定を自分の好みにカスタマイズしてマッチングを楽しむことができます。自分と大きく歳の離れた人が好みの人、同性愛者、性別に囚われない人もTinderでは楽しんでマッチングを楽しむことができると思います。そういった設計のため、かなり多様性のあるアプリになっています。そのあたりはグローバリズムが感じさせられるところでもあります。
さらに、多くのマッチングアプリには「スワイプ」というマッチング候補者の写真を仕分けする機能があるのですが、Tinderには気に入った人に「ライク」を送ることができるだけでなく、「ライク」以上にマッチングしやすくなる「スーパーライク」というものがあります。それぞれをうまく使い分けましょう。

第3章「ネットワークビジネスの勧誘に気をつけよう」

 第2章で紹介した通り、Tinderは自分なりの楽しみ方ができる点が素晴らしいところでもあります。しかし、そんなTinderを使ううえで気を付けておくべきことがあります。それは、「ネットワークビジネスの勧誘ユーザーが多数いる」ということです。筆者は20代男で、自分より少し歳上の女性と出会いたいがためにTinderを頻繁に使うのですが、かなりの頻度で30歳前後の「ネットワークビジネス勧誘ウーマン」とマッチングしてしまいます。ネットワークビジネスとは、Wikipediaによると、口コミによって商品を広げていく「マルチ・レベル・マーケティング」という仕組みを用いたビジネスのことなのですが、そのビジネスを広げるためにTinderを使う人が沢山いるのです。ネットワークビジネスは、購入者を販売員として勧誘し、販売員になるとさらに別の人を販売員として勧誘していくビジネスモデルで、ピラミッドのような構造になっています。ネットワークビジネス自体は違法ではなく、ネットが普及する前はビジネスとして成り立っていたのですが、現代のネット社会においてはあまりにも時代遅れのビジネスなため、「だます」「囲い込む」「徴収する」という悪質な勧誘がたくさん行われています。そんな悪質な勧誘がTinderというマッチングアプリにおいても多数見られるのです。
 筆者自身、ネットワークビジネスの存在を知らなかったときに、Tinder経由で「ネットワークビジネス勧誘ウーマン」に出会ったことがあります。当時の筆者はネットワークビジネスに関して無知で、相手がそういう女性だと気づかなかったため、その女性と3回ほど会い、「ビジネスの話」を持ち込まれました。筆者は、その女性が持ちかける話の支離滅裂さと矛盾さとその女性の言動に不信感を感じたため、「囲い込む」が実行される前に逃亡することができました。しかし、かなり巧妙な手段で何度も接触され、1度信頼した相手に裏切られた気分になり、大変不愉快な経験をしました。実は、そういったケースはよくあるらしく、実際に「だまされ」「囲い込まれ」「徴収された」という被害者もいるそうで、筆者自身、そういった被害者から直接話を聞いたことがあります。その男性は現在も借金を背負っていて辛い想いをしているそうです。そのように、悪質な人間が性愛を求める人間をだまし、お金を奪っていくということがTinderでよく発生しているそうです。普段から論理的な会話が出来る人はそういった被害に遭うことはないと思いますが、そうでない人はかなり注意した方が良さそうです。
 しかし、Tinderを使い慣れてくると、プロフィールの紹介文を見ただけで、「この人は怪しい」「この人は大丈夫」ということが見分けられるようになります。そのため、Tinderを使い始めた頃は怪しい人間に気をつける必要は有りますが、慣れてくると、気軽に安心して楽しむことができると思います。

第4章「他人との接点の持ち方」

 悪質な人間にさえ出会わなければ、Tinderというアプリは人生に豊かな出会いをもたらし、人生を彩ってくれる素晴らしいツールです。
 かつて、人と人が接点を持つためには「足を運んで会う」ということしかできませんでした。現代人の感覚だとかなり不都合で不便な世の中だったと思われます。かつての人類はそのような世の中を生きていましたが、やがて、文明の発達により「自動車で移動し、離れたところに住む人に会う」「飛行機で海の向こうの人間と会う」ことが容易になり、「手紙を送る」「電話をする」「スマートフォンでメッセージを送る」など、もはや会わなくても接点を持つことができるようにすらなりました。
 そういった人類の進歩が続いた結果、現代社会ではスマートフォンでマッチングアプリを開くだけで、「名前どころか存在も知らない人間とやりとりする」という過去には考えられないような他人との接点の持ち方ができるようになったのです。Tinderを始め、あらゆるマッチングアプリは「他人との接点の持ち方」に多様性をもたらしたのです。その結果、多くの人間の価値観が大きく変化しています。

第5章「付き合うとは」

 たとえば、日本という国は法的に「一夫一妻」が定められていて、しかも「結婚」をすれば基本的には生涯その人と暮らすことが運命づけられますが、そういった「一夫一妻」「結婚」というルールに対して疑問を持ち始める人が増えています。
 一夫一妻という制度は、性愛やパートナーについて、「男と女」という二元論でしか語られなかった時代に出来上がったものです。当時は、LGBTの人たちの存在が排除されたり、不特定多数の人と親密な関係を持つことがタブーとされていました。しかし、実際は性別を「男」「女」で完璧に区別することはできないということが一般的に認識されたり、1人のパートナーに収まらない人がたくさんいることが認識され始めています。要するに、「一夫一妻」という制度は法的には存在するものの、全員がそれを守ることはできないということが一般的に認められてきているのです。
 また、結婚というものはあくまで「虚構」という「想像上の産物」であり、物語でしかないということを多くの人が認識しつつあります。かつては結婚という物語が「幸せの象徴」として成り立っていましたが、情報社会によって、結婚の負の部分が知られるようになり、実際は物語でしかないということが明るみになってきました。冷静に「結婚」という虚構について考えると、物語としての華やかな部分以外は「1人のパートナーに縛られなければならない」「パートナー関係を解消するのに多大なコストがかかる」など、人によってはかなりの苦痛になる面が多分にあります。どれだけ物語で自分の人生を彩ろうとしても、現実社会からは離れられないので、物語の効果が途切れたときに悲惨な目に遭う人がたくさんいるのです。
 そういった「一夫一妻」「結婚」に対する批判的思考は、Tinderを使い、たくさんの人間と出会うと嫌でも身につきます。たとえば。日本では未婚者であっても、パートナーと親密な関係になる前に「付き合う」という虚構の行為を経て、「彼氏」や「彼女」などといった関係性を持つことがありますが、そういった一連の流れに違和感を持つようになります。
 もちろん、特定のパートナーと関係を深めていくことはとても素晴らしいことで、その素晴らしさは何かと比較をして評価できるものではありません。しかし、パートナーを特定してしまうことで、自分と接する人間が特定の人間に絞られていくことになり、自分の心の拠り所とする箇所が減ってしまうことになります。たとえば、特定のパートナーへの依存性が強くなりすぎると、その数少ない依存先が破綻してしまったときに被る絶望感を想像して、束縛的な関係性になってしまいます。
逆に依存性を弱めればいいのではないかという話になりますが、もしそうするなら、そもそも「付き合う」という行為は果たして必要なのか、という疑問が出てくると思います。むしろ、特定のパートナーと「付き合う」ということはせず、不特定多数の人間と緩い関係性で繋がっている方が、心身ともに安定した生活を送ることが可能です。特定のパートナーだと、嫌なことがあれば鬱憤が溜まる一方ですが、依存先が多数あれば過度のストレスを溜めることなく、お互いの精神衛生をクリーンに保ったまま、時間を共有することができるのです。
「一夫一妻」「結婚」という制度や風習は、ネット社会以前に出来上がったものです。しかし、それはネットが普及した現代においても文化として残っています。そういった文化は、日本で何気なく生きていると当たり前のものとして受け入れがちですが、Tinderという多様性溢れた人間と出会うことができるツールを使うと、「一夫一妻」「結婚」が当たり前のものではなくなってきます。それが「良いこと」なのか「悪いこと」なのかは誰にもわかりません。しかし、Tinderを使うことで、「一夫一妻に縛られなくてもよい」「結婚をしなくても幸せになれる」という考え方を手に入れることができ、自分の人生を生きる上での選択肢を増やすことに繋がるのです。かつて、常識とされていたものはあくまで当時の世の中においては合理的なものであっただけで、世界が変化した現代においては必ずしも最適解だとは限らないのです。

第6章「筆者の体験談」

筆者は男性で、こういった考えは「男尊女卑」なのではないかという懸念を持たれた方もいるかもしれませんが、実は、「一夫一妻」「結婚」に対して批判的思考をもつことに関して、性別は関係ありません。
 筆者はTinderで20代後半の女性とたくさん会い、お互いの価値観について何度も語りましたが、「一夫一妻」「結婚」という制度は必ずしも則る必要はないと感じている方は多数いました。むしろ、筆者が過去に「結婚はいつかしなければならないものである」「パートナーは特定の人間に絞らなければならない」といった価値観を持っていたときに、Tinderで出会った女性が新しい価値観を筆者に教えてくれるようなこともありました。「一夫一妻」「結婚」という制度が全てではなく、そういった枠からはみ出すような生き方はタブーでもなんでもなく、とても「自然」な生き方だというように認識されてきているのです。
 友人の紹介や、社内での出会いから恋愛関係に発展したり、結婚に繋がるというのは、とても喜ばしいことで、人生を豊かにしてくれることだと思います。しかし、そういった出会いは自分の特性に近い人間が自分に近づいてくるということが多いため、自分の価値観、大きく言えば人生観を揺るがすような出会いになることは滅多にありません。Tinderという、自分に間接的な繋がりのない人間との出会いを増発させるツールを使うことで、自分の価値観とは離れた人間と知り合うことに繋がり、それが自分の人生の選択肢の数を豊かにすることに繋がるのです。

第7章「おわりに」

 以上が「Tinderで身に付いた人生観」というお話でした。現代のネット社会では、たくさんの情報が錯綜し、「正解」を求める人にとってはとても生きづらい時代だと思います。もちろん、結婚することや、浮気をせず特定のパートナーに一途に生きることは、自分の人生をドラマチックなものにするということを考えると、とても素晴らしいことです。しかし、人生というのはそれだけが「正解」ではなく、そもそも人生には「これが正解」というものはありません。そういった考え方は、Tinderというマッチングアプリを使うことで学ぶことができると思います。そういった意味では、「生きづらさ」を感じる人にとっても学びのある素晴らしいツールだと思います。
 また、Tinderを使うにあたって気をつけるべき存在として、「ネットワークビジネス勧誘ウーマン」についても触れましたが、そういった人間と接触すること自体も、もしかすると自分の人生観を揺るがす出来事になるのかもしれません。「楽しいことしかない」と手放しでTinderを絶賛することはできませんが、「怪しい人間」と出会うようなイレギュラーな出来事も、新しい価値観を学ぶきっかけになることもあるのです。
 昨今はあらゆるマッチングアプリがWeb広告に掲載されることが増えたことで、知名度も人気も上昇しています。それらマッチングアプリの中でもTinderはグローバル色が強く、多様な出来事に出会える機会が多いアプリです。「多様性」が叫ばれる時代において、Tinderはとても実りのあるツールなのです。